研究概要 |
定常状態にある枝葉の塊(定常クラスター)のサイズや分枝構造の変異を生み出す要因を探るため、コナラの樹冠最上部の定常クラスターの構造発達を近似するモデルを用いた解析を行った。その結果、枝の主軸伸長量は定常クラスターの葉面積が最大になるように決定されている可能性が示唆された。樹冠最上部の枝の死亡率は、当年性(0年生)よりも1,2年生シュートで最も高いと推定された。また、定常クラスター内の当年生シュートが死ににくくなるほど、定常クラスター内で最大の死亡率を示すシュート齢がより高齢になる(より高齢のシュートの塊で枝が枯死する)傾向があることがわかった。以上の結果は、個体レベルの制御により起こるとされる大枝単位の枯死が、単に当年生シュートの枯死を制御することで起こりうることを示唆している。 シラカンバ稚樹49個体でシュートの直径を計測し、シュート直径がどのような要因によって決定されているか検討した。シュート直径は、シュート長、直径測定場所より先端部分についている葉の数(積算葉数)、親シュート長、発生位置、シュートを含む枝の高さ・長さ・齢、枝先端での光強度など複数の要因によって決定されていることがわかった。シュートの齢が進むにつれて、直径の決定要因の相対的重要性が変化した。当年生シュートの直径に対しては、シュート長が最も強く影響を与えていたが,1年生以降のシュートの直径に対しては、積算葉数が最も強く影響を与えていた。シュートの齢が進むにつれて、光強度や枝の高さの影響が減少し、枝の長さ・齢の影響が増加した。齢の進行につれておこるこれらの変化は、シュートの機能が光合成・蒸散から子シュートへの通導や小シュートの力学的支持に変化することに対応していると考えられる。 以上の結果は2006年11月に行われた国際学会で口頭発表し、同学会proceedingsへ2本、国際誌へ2本の論文を投稿中である。
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