研究課題
基盤研究(B)
樹木の枝先スケールの構造や動態と群落スケールの構造や動態との関連を調べるために、以下の研究を行った。シラカンバ個体群を対象とした調査から、個体上の光強度が強いほどシュート死亡率が高く、特に3年生シュートを基部とする当年生シュート群が枯死する確率が高いこと、その一方当年生シュート長やシュートあたりの葉量の個体平均値は、個体上の光強度が中程度の個体で最も大きいこと、当年生シュートおよびその親枝の形態的性質や枝先端での光強度など複数の要因によってシュート直径決定されていること、シュートの齢が進むにつれて直径の決定要因の相対的重要性が変化すること、などを明らかにした。これら一連の結果は、群落状態の樹木では、枝の成長のみならず、枝の分枝率、枝の死亡も個体レベルで制御されていることを示している。また、コナラの樹冠最上部の定常クラスターの構造発達を近似するシミュレーションモデルを用いた解析から、枝の主軸伸長量は定常クラスターの葉面積が最大になるように決定されていること、個体レベルの制御により起こるとされる大枝の枯死やその寿命が、単に当年生シュートの枯死を制御することで起こりうること、などを示した。また、長期観察データからミズナラ樹冠の発達をレイトレーシング法を用いたシミュレーションモデルで解析し、樹木群が長い期間に樹冠を明るい方向に発達させることで強い隣接個体間競争を避けうることを示した。群落スケールのモデリングは個体成長の集合であるため、以上の結果から、枝葉スケール動態縲恁Q落スケール動態の結合に関する研究の方向性が明確になった。さらに、森林動態モデルによる群落構造の検証の手段として、地上からの調査データから個体葉面積、林分LAIおよび林分葉面積垂直分布を推定する方法の開発、毎木データから客観的に決定可能な森林群落高の定義の提案等を行った。
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