研究課題
1.北上高地におけるニホンツキノワグマの行動圏と環境利用、被害発生の実態などについて、テレメトリー法を用いて調査した。2006年7〜8月に遠野市において3頭のクマの生け捕りに成功し、発信機を装着して放獣した。また前年に捕獲した3頭も加えて計6頭について冬眠穴まで追跡をおこなうことができた。その結果、いずれの個体も農地の広がる里地に隣接する山林を主たる利用場所としており、特に夏の間は多くの個体が、月間の行動圏が約200ha前後という非常に限られた範囲で活動していた。農地や道路といった人為的環境とクマの利用地点との最短距離を月別に平均したところ、1頭をのぞくすべての個体が有意に夏季に人為的環境に接近することが確認された。さらにいずれの個体も10月下旬〜11月中旬にかけて行動圏を東側の山地(奥地側)に広げる行動が見られ、11月下旬〜12月中旬にはすべての個体がその山地に移動して冬眠に入ったことが確認された。これらのことから北上高地に生息するツキノワグマの特徴として、夏季の主たる利用環境が、里地に近接した山林部であるといえ、常に農地に出やすい状況の中で生活をしていると考えられる。したがって、これらの地域では、農地と山林の間の境界を明確にするために、ブッシュの刈り払い、農地周辺を電気牧柵で囲うなどの処置を日常的におこなうことによる被害防除対策が必要であることが示唆された。2.奥羽山系において、夏から秋にかけて2頭のクマを捕獲し、10分おきに定位できるように設定したGPS発信器を装着した。その結果、果樹園や人家周辺に出没した個体はすべて夜間に出没してリンゴを食害していたこと、逆に人里から遠い水田地帯に出没した個体は日中に食害をしていたことが判明し、人為の影響がクマの行動様式に影響を与えていることが示唆された。3.岩手県内で捕獲されたツキノワグマ31頭の糞便から分離した大腸菌の薬剤耐性検査の結果、13頭から薬剤耐性菌が検出された。これらは、4市町で農作物被害のために有害駆除捕獲されたものであり、人間生活圏に近接して生息する個体の存在を示唆するものと考えられた。4.近年農林業被害多発が問題になっているニホンカモシカを対象に、死亡個体の資料からその死亡要因および死亡個体の特性に関する調査をおこなった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
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