研究概要 |
1.幼令スギ,ヒノキ林を対象に,斜面上部下部の蒸発散量,土壤水分,土壤呼吸量を計測するとともに,流域内の微気象の空間分布計測を行ない,斜面がもたら不均一さを明らかにするための観測設備を構築し,計測を進めた。 1)植栽された樹木の成長が斜面部位で異なることについて,谷を横断する側線約50mについて,樹高,幹直径,葉窒素含有量,土壤水分,地下水位,土壤溶液水質,土壤窒素量などが調べた。5年生のスギの成長が谷で旺盛であり,尾根部が劣る理由は,尾根部における水ストレスがもたらすものではなく,湿潤な谷部の土壤由機物の分解による窒素の供給が谷部の活発な成長に関わっているという結果について,観測と解析を継続した。 2)レーザプロファイラのデータを用いて植栽された樹木位置と樹高を小流域単位で評価する手法について検討を進め,小流域の全域について樹高の分布が図化された。 タイ国チェンマイ近郊のドイプイ山に位置するKog-Ma試験地(樹高約30mの常緑林)にある50mタワーにおいて取得された微気象データを解析し,斜面風の形成と樹冠上から林内の気温形成過程,風速鉛直分布の形成過程について,解析した。 1)樹冠上から林内の気温形成過程に与える夜間斜面下降風の影響 夜間に生ずる斜面下降風発生の発生,非発生は大気安定度の指標であるバルクリチャードソン数に関係している。夜間の放射冷却が弱いとき,気温鉛直分布における最低気温は林床近くで生ずる.放射冷却が強くなると,樹冠上部で最低気温が生ずる。そして,更に放射で最低気温が生ずるという,3段階の気温鉛直分布形成機構があることが,明らかにされた。 2)昼間の風速鉛直分布の形成過程 夜間に比べて解析が困難であった昼間の風速鉛直分布について,大気安定度と鉛直分布の関係を解析した。 その結果,風速鉛直分布は大気安定度がもたらす上空の卓越風が強いときと,卓越風が弱く地形性の斜面風が吹くときの差に比これらの結果によって,尾根と谷が微気象に与える影響の理解が深化した。
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