研究概要 |
本研究では,マツ林における外生菌根共生系の維持機構に関わる生物的要因の影響を明らかにするために,菌根共生系と根圏微生物群集との相互作用を分子生態学的手法により解明し,その相互作用を利用した外生菌根菌の活用技術の確立を図ることを目的とする。本年度は以下の成果が得られた。 1.外生菌根および周辺の根圏微生物群集の分子生態学的解明 (1)クロマツ海岸林における外生菌根菌の群集構造を調査した結果,林縁個体の方が林内個体よりも外生菌根形成率が低く,また,外生菌根菌の種の多様性も林縁個体の方が林内個体よりも低かった。 (2)アカマツ-マツタケ外生菌根から根圏細菌の分離を行った結果,古い菌根からは多数の細菌が分離されたのに対して,若い菌根からは細菌が分離されなかった。 2.菌根共生系に及ぼす根圏微生物の影響の解明 アカマツ-外生菌根菌-根圏微生物共存系をin vitroで構築する手法を確立するための第一段階として,マツタケまたはキツネタケとアカマツとの共生系に及ぼす光強度の影響を調査した。その結果,キツネタケ接種個体の成長量は光強度に関係なく対照個体よりも有意に大きかったのに対して,マツタケ接種個体の成長量は光強度が強いときにのみ対照個体よりも有意に大きかった。 3.外生菌根共生系構築過程への根圏微生物導入効果の実証 根圏微生物の導入効果を大型ライゾトロンにおいて実証するため,外生菌根菌フリーのアカマツ大型苗木の作出を行った。また,アカマツ-外生菌根菌-根圏微生物共存系の構築手法を確立するために,アカマツ-外生菌根菌共生系に及ぼす植物油や界面活性剤,樹皮の添加の影響を調査し,外生菌根菌の種ごとに添加物の影響が異なることが明らかにされた。
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