研究概要 |
本研究では,マツ林における外生菌根共生系の維持機構に関わる生物的要因の影響を明らかにするために,菌根共生系と根圏微生物群集との相互作用を分子生態学的手法により解明し,その相互作用を利用した外生菌根菌の活用技術の確立を図ることを目的とする。本年度は,以下の成果が得られた。 1.外生菌根および周辺の根圏微生物群集の分子生態学的解明 (1)クロマツ,アカマツ,セイヨウハコヤナギ,シラカシに共生する7種の外生菌根菌について,子実体発生直後および発生2ヶ月後の子実体直下における地下部菌根の消長を調査した結果,子実体発生直下における地下部外生菌根菌群集の経時変化は菌種により異なることが明らかにされた。 (2)広葉樹林で採集したマツタケのシロの中の根と菌根の形態観察とDNA解析を行った結果,マツタケが広葉樹と菌根を形成していることが確認された。また,マツタケ分離菌株をブナ科樹木苗へ接種した結果,マツタケはブナ科樹木を宿主とし得ることが明らかにされた。 2.菌根共生に及ぼす根圏微生物の影響の解明 フラボノイドがアミタケの胞子発に対する効果について調査した結果,morin,hesperidin,chrysin,quercitrin,rutin,naingenin,genistenの添加により,無添加の場合よりも胞子発芽率が有意に高かった。このことから,根の滲出物に存在するフラボノイドが,アミタケの胞子発芽を誘導するシグナルとして作用しているものと推測された。' 3.外生菌根共生系構築過程への根圏微生物導入効果の実証 大型ライゾヒロンを用いたクロマツとウラムラサキの共生系を構築する手法を検討した結果,温度条件と光条件を制御したライゾトロンにおいて,ウラムラサキ接種苗を2ヶ月間育成することにより,ウラムラサキの子実体を形成させることができることが明らかにされた。
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