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2008 年度 実績報告書

隔離ブナ集団の繁殖能力低下をめぐる開花量とシイナと散布前虫害との関係の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17380090
研究機関東京大学

研究代表者

鎌田 直人  東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90303255)

研究分担者 安江 恒  信州大学, 農学部, 准教授 (00324236)
キーワードブナ / イヌブナ / 豊凶 / 種子 / 物質収支 / 昆虫 / 熱量 / 炭氷化物
研究概要

東京大学秩父演習林(標高1200m)に生育する,ブナを対象とし,成長錐コア試料を採取し,生育地を代表ずる年輪幅,年輪内平均密度および年輪内最大密度の時系列(クロノロジー)を構築した。各クロノロジーと過去約100年間の月降水量,月平均気温,月日照時間との関係を単相関分析より解析したところ,年輪幅変動には8,9月の降水量や日照が影響を及ぼしていること,年輪内平均密度や年輪内最大密度には,7-9月の気温や日照が影響を及ぼしていた。過去17年間の年輪幅や密度と、堅果量の関係を解析したところ,総堅果数(=開花数)が年輪幅に弱いながらも関係が認められた。デンドロメータ法およびピンマーキング法によって肥大成長期間を観測した結果,本地域におけるブナの肥大成長は5月下旬から9月下旬までであった。一方、これまでの本科研の研究成果から、ブナが種子生産に大きな投資を行うのは、開葉から1カ月の間と、梅雨明けから1カ月の期間であることが明らかにされている。海洋から1カ月の間には、成熟種子に投資する熱量の40%が投資されるが、梅雨明け後の1カ月に残りの60%が投資される。また、東北地方の八甲田山と八幡平で同様に成長錐コア試料を採取下結果では、葉食性昆虫であるブナアオシャチホコの大発生の影響が非常に明確に現れ、当年の8月(失葉)以降、および、翌年に強い負の影響が認められた。したがって,ブナの肥大成長(樹幹への光合成生産物のアロケーション)に対して種子生産量が及ぼす影響は限定的であり,肥大成長はむしろ,成長期間後半の気候条件や、夏に周期的に大発生する葉食性昆虫の大発生により強く影響されていると考えられた。林分中央では端の個体に比べ不健全堅果の割合が低く、これらの不健全堅果はほとんどは中身が空であるシイナ堅果であった。質的花粉制限による不健全堅果の割合が増加する原因として、近交弱勢の発現が不健全堅果の発生する割合を増加させることが考えられる。質的あるいは量的な花粉制限が考えられる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2009 2008 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] ブナ(Fagus crenata)近距離母樹問にちける個体間距離と交配の頻度および花粉プールの多様性の差異

    • 著者名/発表者名
      花岡創・袴田康子・向井譲
    • 雑誌名

      日本森林学会誌 (印刷中)

    • 査読あり
  • [学会発表] 標高の違いがブナの結実特性と豊凶周期に与える影響2009

    • 著者名/発表者名
      小谷二郎・鎌田直人
    • 学会等名
      第56回日本生態学会大会講演要旨集
    • 発表場所
      岩手県立大学
    • 年月日
      2009-03-19
  • [学会発表] 林内・林縁におけるブナ(Fagus crenata)の花粉を介した遺伝子流動の差異2008

    • 著者名/発表者名
      花岡創・袴田康子・向井譲
    • 学会等名
      第57回日本森林学会中部支部大会
    • 発表場所
      岐阜大学
    • 年月日
      2008-10-11
  • [図書] ブナの種子食昆虫の生態p53-70「ブナ林再生の応用生態学」寺澤和彦・小山浩正編2008

    • 著者名/発表者名
      鎌田直人
    • 総ページ数
      310
    • 出版者
      文一総合出版
  • [図書] 生物間の相互作用と森の昆虫のダイナミックスp64-73「エコロジー入門森の不思議を解き明かす」(矢原徹一責任編集)2008

    • 著者名/発表者名
      鎌田直人
    • 総ページ数
      96
    • 出版者
      文一総合出版
  • [図書] ブナ受粉の分子生態学p71-79「ブナ林再生の応用生態学」寺澤和彦・小山浩正編2008

    • 著者名/発表者名
      向井譲
    • 総ページ数
      310
    • 出版者
      文一総合出版

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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