研究概要 |
1.30年生スギ人工林において、節足動物群集の餌・すみ場所資源であるリターの動態を明らかにするために、その樹冠層と土壌層(L層)に存在するリター量、および両層間を移動するリターフォール量の季節変化を調査した。樹冠層に滞留する平均リター量は、約34ton dry wt ha^<-1>で、1年を通じてほぼ一定していたのに対し、土壌層では約8ton dry wt ha^<-1>であり、秋季の減少傾向がみられた。年間の土壌層への資源移動量(リターフォール量)は、約4〜6ton dry wt ha^<-1>yr^<-1>であり、冬季に集中していた。また、枯葉は地上高12〜13m、枯枝は9〜11mの範囲に最も多く付着・滞留しており、垂直分布に季節変化はほとんどみられなかった。 2.スギ林内の異なる資源を利用する節足動物群集の構成と量的特性を明らかにした。樹冠層の枯葉、枯枝、生葉からは、ササラダニ類(Oribatida)、トビムシ目(Collembola)、ユスリカ(Chironomidae)幼虫など、腐食・菌食性の小型節足動物が多数採集され、とくに枯葉で4.2〜11.7g^<-1> leaf dry wtにのぼる密度を記録した。一方、土壌リターにおいても、ササラダニ、トビムシ、捕食性トゲダニ・ケダニ類(Gamasida, Prostigmata)が多数採集され、その密度は2.4〜22(×10^4)m^<-2>に達した。しかし、節足動物群の構成と、両層ともにその80%を占めていたササラダニとトビムシの科構成は、樹冠層・土壌層間で大きく異なっていた。 3.腐食・菌食性節足動物群集において優占するトビムシについて、生活史と時空間分布を明らかにした。異なる高さごとの密度の季節変化と生活史の結果から、6種からなる樹冠層のトビムシ群集は、土壌層からの移動により供給される種と樹上のみを利用する種によって構成され、さらに種ごとに時間的・空間的に異なる分布様式を示した。とくに優占していた樹上性トビムシ3種では、高さごとの体サイズ分布の違いから、森林の垂直構造に対応して齢構造が変化していることも明らかとなった。 4.樹冠層の資源動態の比較のため、亜熱帯林の着生シダ内に堆積するリター中のササラダニについても予備調査を行なった。
|