研究課題/領域番号 |
17380092
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 宏之 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (00115841)
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研究分担者 |
黒田 慶子 森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (20353675)
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キーワード | アカマツ / 材線虫病 / 松枯れ / 抵抗性家系 / 感受性家系 / 分子指標 / 樹脂道断面積 / 線虫移動阻害 |
研究概要 |
「抵抗性の分子指標」を得るために、材線虫感染後の感受性および抵抗性の両アカマツからcDNAライブラリを作成した。ライブラリサイズ約200万の遺伝子群の中から、両家系の遺伝子発現差が認められたクローンを約3千個拾いワンパスシーケンスした。その結果をクラスター分類し、両者の発現差が10倍以上の遺伝子、約30種類を見いだした。この中には、抵抗性体に特徴的な遺伝子群として、二次代謝系に関与する酵素系、輸送体、転写因子が多数見いだされた。抵抗性家系個体では、二次代謝関連遺伝子群が、材線虫感染に伴い、正の発現制御を受けると推察される。今後、このような発現情報を利用してアカマツの材線虫に対する抵抗性・感受性の診断・判定への展開が期待できる。材線虫に対する抵抗性の原因は、ここで得られた遺伝子群と密接に関連するものと思われる。 次に、感受性および抵抗性マツの線虫移動阻害に着目して、両家系間の解剖学的な組織構造差を検討した。抵抗性母樹8個体および非抵抗性の3個体、抵抗性が極めて高いテーダマツ1個体から当年〜2年生枝を採取して解剖し、線虫が移動に利用する樹脂道のサイズや分布を調べた。抵抗性母樹では、非抵抗性よりも木部の樹脂道数が少ないことが明らかになった。抵抗性クロマツでは皮層の樹脂道断面積が大きいことがわかっていたが、アカマツでは皮層樹脂道について抵抗性、非抵抗性間の差異はなかった。抵抗性として選抜されたアカマツ個体では、木部内の線虫の移動が物理的に困難であることが、発病阻害の-因として関与するものと推測された。
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