研究概要 |
産業廃棄物の総排出量は近年4億トン前後を推移しており、その縮減にむけてリサイクル率のさらなる向上が多くの分野で望まれている。このような状況下、本研究は有機性廃棄物の個々の特性を生かして複合資材化することで荒廃地緑化に有効再利用するための実用的な方策を確立することを目的とした。本研究は、有機性廃棄物の大半を占める下水汚泥を主原料として、緑農地利用に際して解決すべき最大の課題である含有重金属の汚染防止に関して、高温加熱による難溶化と木質系廃棄物の炭化処理副資材の混入による重金属元素の吸着固定によって安全な有機性廃棄物の緑化資材を作りその実用性を示した。 第1段階として下水汚泥ケーキあるいは下水汚泥コンポストに含有される主要重金属元素の存在形態を明らかにするため形態分別を行った。その結果、亜鉛は70~80%が有機結合態,10~15%が炭酸塩態として存在しており、銅も吸着態と炭酸塩態の比率が比較的高く、土壌中で溶出しやすい性質であることを明らかにした。さらに、これら脱水汚泥ケーキを800~900℃の高温加熱処理をすることによって、有機結合態および炭酸塩態の比率が大幅に減少することと、それらが難溶性である事実を明らかにした。また、このような高温条件下ではカドミウム、鉛などの低沸点物質を排ガスとして分離できることも判明した。 第2段階として、瀬戸内沿岸地域に長年放置されている劣悪土壌条件の荒廃林について早期緑化のためリン資材として用いるための野外実証試験を実施した。その結果、本研究で開発した資材は有機性廃棄物中のリン資源を有効化(可給化)し、荒廃地緑化に活用できることを示した。しかし,実際の利用に際しては,花崗岩風化土壌の結果と火山灰性黒ボク土のそれとでは、含有重金属の挙動に大きな相違があることも示された。このうち花崗岩風化土では施用直後に供試植物の生育が劣っており,汚泥資材だけでは窒素欠乏に陥ることが示唆された。そこでこの問題を改良するために微量の鶏糞など有機質資材を添加することで肥料木の初期成長を高め緑化成績の向上を図ることで実用性を確認した。
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