研究課題
マイナス40℃以下の低温まで長期間にわたり安定的に過冷却を維持する能力を持つ、樹木の木部柔細胞に着目して、過冷却のメカニズムを明らかにして、何らかの過冷却促進物質を同定して、その応用を計ることを目的として研究を行っている。広葉樹12種、針葉樹8種の木部から80%エタノール抽出物を得て、ドロップレット凍結法でこれら抽出物が水の過冷却に及ぼす機能を解析した。木部柔細胞が過冷却により適応するこれらすべての樹種からの抽出物に、水を過冷却させる能力があることを明らかにした。特に、広葉樹ではカツラ、針葉樹ではカラマツからの木部抽出に高い活性が認められ、コントロールに比べ10℃前後の過冷却の促進効果を示した。このため、これら2樹種を主材料として用い、さらに、抽出物を限外濾過、HPLCなどにより、順次精製を続け、高い機能性物質の精製を目指している。目下、過冷却促進に関与する物質は可溶性糖質、蛋白質では無いことを明らかにしている。過冷却を促進するこれら物質は、氷核形成阻害物質と考えられる。木部から抽出したこれら物質を含む抽出画分は、ヨウ化銀、氷核形成細菌という異なった氷核形成物質による凍結に対しても、水分子自体が氷核になる均質核形成による凍結に対しても、いずれにも氷核形成阻害効果を持つことが明らかになった。また、過冷却は水滴の大きさ、および冷却速度に依存して増加することが知られている。ドロップレット凍結法では0.2マイクロリッターの水を冷却速度0.2℃/分で冷却する。より多量の水に対する抽出物の効果を確かめたところ、1CCの水を10日以上安定的に過冷却させる効果をもつことが明らかになった。引き続いて、物質の同定とこれらによるバルクの水の長期間安定的過冷却効果への検討を続けている。
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Cold Hardiness in Plants : Molecular Genetics, Cell Biology and Physiology
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