研究概要 |
木材腐朽菌として知られる担子菌によるセルロース分解機構の解明は,生態系での炭素循環プロセスを正しく理解するため,それが生産する酵素によるセルロースの有用物質への変換を考える上で極めて重要である。そこで,本研究では,担子菌Phanerochaete chrysosporiumがセルロース分解培養系において菌体外に生産する主要な酵素タンパク質の同定をめざしたプロテオーム解析を試み,ここで同定された菌体外酵素についてはその対応遺伝子のcDNAが取得を行い,さらに酵母菌Pichia pastorisの発現系に形質転換し,組換え体としてそれぞれの酵素を生産することを試みる。また,得られた組換え酵素について基質特異性やその反応速度など触媒機能などを解析するとともに,その結晶化と三次元構造の解析を行なう。 本年度は,セルロース分解培養系ならびにこれに少量のキシランあるいはマンナンを添加した培養系から得た菌体外液に対して二次元電気泳動を行い,そこで分離された主要なタンパク質をトリプシン消化後,マススペクトル解析に供した結果,糖質加水分解酵素ファミリー6(GHF6)に属する酵素1種,GHF7に属する酵素4種,GHF12に属する酵素1種,GHF16に属する酵素2種,GHF43に属する酵素1種,GHF61に属する酵素1種,GHF74に属する酵素2種などを同定することに成功した。このうち,GHF6に属する酵素1種(Cel6A),GHF16に属する酵素1種(Lam16A),GHF43に属する酵素1種(Gal43A),GHF61に属する酵素1種(Cel61B),さらにGHF74に属する酵素2種(Cel74AおよびCel74B)については酵母菌Pichia pastorisの発現系を利用して組換えタンパク質として生産することに成功した。さらに,得られた組換え酵素について,その機能解析を行った。
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