研究概要 |
担子菌Phanerochaete chrysosporiumがセルロース分解培養系において生産する主要な酵素タンパク質についてプロテオーム解析を試み,ここで同定された糖質分解酵素の対応遺伝子をcDNAとして取得し,さらに異種発現系を用いて組換え体としてそれぞれの酵素の生産を行った。また,得られた組換え酵素について基質特異性やその反応速度など触媒機能などを解析するとともに,その結晶化と三次元構造の解析を試みた。前年度までに行った結果に基づき,本年度は担子菌P.chrysosporiumがセルロース分解培養系の中で生産する糖質加水分解酵素ファミリー(GHF)1,16,55および74について組換え体酵素を生産し,その機能と構造を解析した。 GHF1については,2種の酵素(BGL1AおよびBGL1B)を大腸菌の発現系で組換え酵素として生産し,相互の構造ならびに機能解析を比較検討した。その結果,両酵素においてはセロビオースに対する活性が大きく異なることを示し,さらに三次元構造の解析により酵素活性中心においてセロビオースの還元末端側残基を認識する部位に特徴的な差異のあることを明らかにした。 GHF16についは,菌体壁成分であるβ-1,3/1,6-グルカンの代謝に関わると思われる酵素Lam16Aを組換え体として生産し,その機能を解析したLam16Aはラミナリンを基質とした場合,6-O-グルコシル-ラミナリトリオースを分解生成物として定量的に与えた。したがって,Lam16Aはβ-1,6-側鎖構造の存在を認識しており,加水分解反応を触媒するためには少なくとも側鎖を持たないラミナリビオース様のβ-1,3-グルカン構造が必要であることが明らかとなった。また,Lam16Aの結晶を取得し,その三次元構造を解析した。 GHF55に属するβ-1,3-グルカナーゼならびにGEF74に属するキシログルカナーゼについても,組換え体として発現生産することに成功した。これらの酵素の機能ならびに酵素解析については次年度の課題とする。
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