(1)マガキ血球のもつ貪食能の標準値(適用範囲)の決定 生体防御能の中心であるマガキ血球の3種類のカキで測定し、それぞれの種の標準値を、いくつかの垂下場所と季節に関して算定した。採取は年間を通して行った。 その結果、同一場所で採取したカキであっても個体差が大きいものの、一定の傾向を把握することができた。すなわち、血球の生体防御能は季節変動を示すが、それは2つの要因、水温の変動と生殖年周期によって制御されていると考えられた。これは3種類とも同様であった。 (2)マガキ血リンパのもつレクチン活性・リゾチーム活性標準値の決定 血リンパに存在するレクチンおよびリゾチームの活性について、まず正常な個体のもつ正常な変動幅を知って標準値を定めた。次に、細菌接種の刺激を与えた時の活性の変化を調べた。 その結果、レクチンは血リンパで高い活性が検出された。対照的にリゾチーム活性は血リンパでは非常に低く、外套膜、消化盲嚢といった組織において高い値を示した。細菌接種によって、レクチンのウマ赤血球を凝集する活性が有意に高くなった。しかし、組織のリゾチーム活性は変化しなかった。 (3)マガキのもつ新規レクチン・キチナーゼ遺伝子配列の決定 生体防御機構にとって重要なレクチンおよびキチナーゼについて、新規の遺伝子を特定し、その遺伝子発現を調べた。その結果、血球に特異的に発現する遺伝子が見つかった。細菌に対する反応などはまだ明らかではないが、生体防御関連遺伝子の可能性が高い。
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