一般的に稚魚は化学物質に対して成魚よりも敏感であり、免疫毒性に対しても強い影響が見られることが予想される。そのため自然界に排出された化学物質は稚魚の資源に影響を与え、そのことが個体群の減少を招くことが考えられる。そこで、稚魚に対しカドミウムおよびクロム(III)を曝露させて、以下の実験を行った。 孵化後4日のティラピア稚魚(約8mg)を排水基準および環境基準値のカドミウムまたはクロム(III)に96時間曝露し、その後E.tarda 1.0x10^6cfu/mlに調整した薄い培地(1%トリプトン、0.85%NaCl)に浸漬感染させ、死亡する時間を調べた。実験魚は死亡後直ちに固定し、HE染色、抗E.tarda免疫組織化学反応、アポトーシス検出のためのTUNEL染色を行った。 カドミウムの環境基準区(0.01ppm)及びクロム(III)の排水基準(2.0ppm)と環境基準区(0.2ppm)において、対照区とほぼ同じ時間で死亡し、紙上皮細胞の核濃縮の頻度、抗E.tarda免疫組織化学染色の陽性反応も同程度であった。カドミウムの排水基準(0.1ppm)においては、E.tarda negtiveの試験区で、試験水の影響と思われる死亡が見られた。これらのことから、カドミウムの環境基準及びクロム(III)の排水基準と環境基準は、免疫毒性が低いと評価された。本研究では化学物質in vivo暴露による魚体への影響の評価にあたって研究の方向性を示せた。
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