(1)ティラピアの鰾好中球に調整した塩化カドミウムを曝露し、ザイモサンを加えて貪食率を求めた。さらに好中球の活性酸素産生量についても測定した。また、メダカ、ゼブラフィッシュにおける暴露の影響を病原微生物を用いた感染実験で評価した。非曝露区では、3時間後の細胞生残率は98%であった。2x10^<-4>、2x10^<-5>、2x10^<-6>Mの濃度では86%、95%、96%であり、生残率の有意な低下が認められた。死細胞には核が断片化した像が多数認められた。貪食率は2x10^<-4>区で有意に低下した。また、活性酸素産生量は、非曝露区に対して3つの区いずれも10%ほど低下が認められたが、有意な差は認められなかった。 メダカ、ゼブラフィッシュに対して1x10^<-4>Mの72時間曝露試験後にE. tardaによる感染実験を行ったが、非曝露区との間に有意な死亡率の低下は認められなかった。 (2)孵化4日後のティラピア稚魚を排水基準および環境基準値の塩化カドミウムまたはクロム(III)に96時間曝露し、E. tardaに浸漬感染させ死亡する時間を調べた。カドミウムの環境基準区(0.01ppm)及びクロム(III)の排水基準(2.0ppm)と環境基準区(0.2ppm)において、対照区とほぼ同じ時間で死亡し、鰓上皮細胞の核濃縮の頻度、抗E. tarda免疫染色の陽性反応も同程度であった。カドミウムの排水基準においては、非感染区で試験水の影響と思われる死亡が見られた。これらのことから、カドミウムの環境基準及びクロム(III)の排水基準と環境基準は、免疫毒性が低いと評価された。本研究で化学物質のin vivo暴露による魚体への影響の評価にあたっての方向性を示せた。
|