本研究実施者は、これまでに魚病細菌Edwardsiella tarda外膜タンパク質glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)が、同菌の異血清型株に対してヒラメでの免疫防御効果を示すこと、および他の菌種にも同等のタンパク質が存在することを明らかにし、本タンパク質の大腸菌リコンビナント生成系を確立している。これらを背景に、本タンパク質の広範な感染防御性を明らかにしようとした。 E.tardaのGAPDHの全アミノ酸シーケンスを決定したところ、Escherichia coli、Salmonella enterica、Shigella flexneriと80%、Vibrio choleraeと91%の高い相同性を示した。つぎに、E.tardaのGAPDHを大腸菌で発現・精製したものやGAPDHを発現した大腸菌自体の免疫効果を、異なった魚種と病原体を用い注射免疫法により調べた。その結果、ヒラメでビブリオ病菌(Vibrio anguillarum)感染に対する効果、ブリで類結節症原因菌(Photobacterium damselae subsp. piscicida)感染に対する効果、およびマダイイリドウイルス(RSIV)感染に対する効果が確認された。これらの結果から、E. tardaのGAPDHによる免疫は、ヒラメ以外の魚種においても防御免疫応答を誘導し、E. tardaとは抗原的な関連がない細菌やウイルスに対しても防御効果を示すことが明らかになった。以上のように、1種類の抗原を使用した免疫によって多種類の感染症を防御する予防法開発の可能性が示された。これらの防御効果は、共通抗原(GAODH)の存在と、本タンパク質の免疫を増強効果(免疫賦活生)がもとになっていると推察された。
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