研究概要 |
【1】ウナギ嗅覚系に関する研究:養殖淡水ウナギおよび三河湾産銀ウナギ(野生魚)からElectro-olfactogramを記録した。匂い物質としてL-アミノ酸20種およびタウリン(Tau)、ベタイン(Bet)を用いた。その結果、淡水ウナギ、銀ウナギともにAspとCys、Betの3種が大きなEOGを発現させた。しかし、銀ウナギは淡水ウナギよりも応答強度が小さく応答閾値も高い傾向が見られた。さらに、両ウナギのアミノ酸刺激に対する行動変化の観察を行った。養殖ウナギはBetに対して大きな反応を見せた一方、Cysに対しては全く行動変化を示さなかった。また、銀ウナギではCys,Arg,Betが行動変化を引き起こした。大きな嗅覚刺激効果を持つ匂いがなんらかの行動を誘起するとは限らなかった。カルボシアニン系蛍光色素(DiI,4-Di-10ASP)および水溶性蛍光色素FM1-43FXを用い、それぞれ、嗅細胞から嗅球・終脳までの神経の走行の可視化と嗅細胞活性に依存した染色を行った。その結果、ウナギ嗅球のシナプス構造がある程度明らかになり、アミノ酸刺激により繊毛型と微絨毛型の両方の嗅細胞が活性化することもわかった。 【2】サメ・エイ類嗅覚系に関する研究:ウナギと同様に、蛍光色素を用いこて匂い受容に関わる神経走行の概要を明らかにすることを試みた。DiI、4-Di-10ASPにより嗅索側から嗅球を染色した結果、きわめて大型の糸球体と思われる構造を多数認めた。硬骨魚類よりもむしろより高等な脊椎動物に近と思われた。また、FM1-43FXを用いた実験では、匂い刺激強度に依存して染色された嗅細胞が確認できた。このことは、FM1-43FXが匂い応答を定量的に測定する際の有用なツールになり得ることを示しており、この方法を用いて嗅板上の嗅細胞の二次元的分布特性についても調べることが可能であることがわかった。
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