研究概要 |
本研究では,魚類に存在するレクチンの分子家系(ファミリー)を統合的に解析し,これらレクチンの生体防御機構などにおける生物機能の解明に資することを目的にしている。マアナゴ体表から単離した複数のガレクチン(Con1,Con2)の変異体を作成し,加速進化による温度耐性や糖鎖結合特異性の新規機能性の獲得を明らかにした。また,同じウナギ目ウツボの体表からはガレクチン・ファミリーだけでなくCタイプ・レクチンを単離して生化学的性状を調べた。さらに,サケ科魚類卵からはラムノース結合特異性レクチン(RBL)ファミリーを単離し,RBLファミリーが卵巣と肝臓で生合成されること,複数RBLがグラム陰性菌や陽性菌とリポ多糖・リポテイコ酸を介して相互作用することや,グルゲア症原因微胞子虫Glugea plecoglossiと濃度依存的に結合することを明らかにした。グルゲア胞子の膜表面糖脂質をHPTLCで分離し,PVDF膜に転写後,レクチンブロットにより,RBLは胞子膜表面糖タンパク質と糖脂質の両方に結合性を示すことを明らかにした。この結合に対してL-ラムノースは弱い阻害作用しか示さなかった。変性RBLには結合性がなく,胞子との強い結合性はRBL特有の膜構造に起因し,親和性の高い結合サイトが胞子には複数存在していると考えられる。次に,ニジマス生殖腺由来の繊維芽細胞(RTG-2)に対するRBLの作用を調べ,RTG-2細胞へのFITCラベルRBLの結合性を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。またRTG-2にRBLを添加後,20℃で24時間インキュベートしてインターロイキン(IL)-8とIL-1βの発現量をRT-PCRにより半定量し,RBLがRTG-2細胞に結合し,0.5μM以上で濃度依存的にIL-8の発現を誘導すること,しかしIL-1βの発現には影響を持たないことを明らかにした。
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