研究概要 |
本研究では,魚類に存在するレクチンの分子家系(ファミリー)を統合的に解析し,これらレクチンの生体防御機構などにおける生物機能の解明に資することを目的にしている。加速進化による機能獲得仮説を基に,マアナヨ・ガレクチン(Con1,Con2)の変異体を設計・作成し,温度耐性や糖鎖結合特異性の改変を行った。水産甲殻類フジツボのマルチプル・レクチン(BRA1,BRA2,BRA3)の糖鎖認識能をフロンタルアフィニティークロマトグラフィー(FC)と100種類のオリゴ糖鎖ライブラリーを用いて精密解析し,糖鎖へのシアル酸付加が親和性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。サケ科魚類卵から単離したラムノース結合特異性レクチン(RBL)ファミリーの生物機能をニジマス由来の培養細胞を用いて調べた。RBLは繊維芽細胞(RTG-2)に結合し,0.5μM以上で濃度依存的にインターロイキン(IL)-8の発現を誘導すること,しかしIL-1βの発現には影響を持たないことを明らかにした。また,PBLは腹腔内マクロファージ細胞(PTM-5)に対してもサイトカイン誘導活性を示した。このとき,細胞内では活性酸素の産生能の増強がみられ,PBLが生体防御に関与していることが示唆された。次に,細胞表面のRBLレセプターを共焦点レーザー顕微鏡とFCによって解析した。RBLには細胞表面に存在する糖脂質糖鎖Gb3への特異的結合がみられ,RBLはラフト上のGb3を介してサイトカイン誘導や活性酸素産生に働いていることが分かった。サバ科サワラ卵から糖タンパク質であるRBLを単離し,糖鎖構造およびジスルフィド結合位置を含む全構造をRBLとして初めて決定した。
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