研究概要 |
臨界粒径領域における呈味に与える効果の判定 前年度までに特定した化学的,生理学的特性を示す臨界粒径よりも微小粒径領域におけるエマルションについて,エマルションの粒径の相違が実験動物およびヒトの味覚に与える効果を明らかにすることを目的とした.異種の呈味物質を個別に添加した1μmおよび6μmの単分散粒径を有するマグロ油,イワシ油および大豆油トリアシルグリセロール(TAG)水中油(o/w)エマルションを調製し,o/wエマルション油脂粒径の大小が味覚に及ぼす影響を検討した.嗅覚不全処理を施したマウスに上記の粒径の異なる3種のTAG o/wエマルションを油脂の種類別に与え,二瓶選択試験を行った.うまみ(グルタミン酸ナトリウム),甘味(プロリン)および苦味(デナトニウム)を個別に加えた系においては,甘味および苦味を個別に加えた系において小粒径エマルションの飲食量は大粒径エマルションのそれを上回った.すなわち,油脂粒径の大小はある種の呈味に影響することが確認された.そこで,同様のo/wエマルションに対するヒトによる官能検査により,どの様な呈味の相違を感じ分けているかを詳細に検討したところ,苦味を加えたマグロ油TAGおよびイワシ油TAGの小粒径エマルションでは先味を弱く感じた.一方,大豆油ではこの様な油脂粒径が呈味にあたえる影響は認められなかった.以上の結果は,n-3系高度不飽和脂肪酸の割合の高い水産油脂の粒径は呈味成分を添加したo/wエマルションに対する選択性に影響することが明らかとなった.
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