研究課題
基盤研究(B)
無脊椎動物から脊椎動物まで収集標本数は19年度末で1000種程度に達した。600種775個体についてITS1領域のPCR増幅を行い、約9割である688個体の相同領域が単一のプライマーセットで増幅されることを確認した。増幅が確認された個体のうち273種315個体についてITS1領域の部分あるいは全塩基配列情報を得た。全ての配列情報はデータベースに登録した。ハイブリダイゼーション効率に影響すると予想される塩基配列長とGC含量について検討したところ、脊椎動物のITS1は長く(318-2300bp)GC含量が高い(56.6-78%)傾向が見られた。中でも板鰓類(サメ、エイ)は非常に長いITS1領域(878-2300bp)を持つ特徴があった。ゼラチナス動物(刺胞動物、有櫛動物)のITS1は他の動物より有意に短く(118-422bp)GC含量も低かった(35.8-61.7%)。節足動物や軟体動物では長さ、GC含量ともに幅が広く、182-1613bp及び42.8-66.5%であった。昨年度に50種類の生物のITS1領域を固定した試験的チップを作成し、8種類のプローブとハイブリダイゼーションを行った結果、8種のプローブは正確にそれぞれのスポット部分とハイブリダイゼーションし蛍光が確認された。しかし、シグナル強度の違いや非特異的ハイブリダイゼーションが見られたため、最終年度では魚類から無脊椎動物200種類で得られた塩基配列情報に基づいて、種間で相同性は低いがGC含量の類似する60塩基領域を探索した。探索結果に基づいて、60塩基の種特異的オリゴDNAを化学合成し、チップ上に固定した。200種から40種を選んで蛍光標識プライマーを用いてPCRを行い、それをプローブとしてハイブリダイゼーションを行った結果、非特異的ハイブリダイゼーションが激減すると同時にスポット間の蛍光強度差が軽減された。
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