研究課題
ネパールカトマンズ近郊の農業水利組合について調査を実施した。カトマンズ盆地内サリナディ灌漑区について、夏馬鈴薯栽培における上下流間での単収格差の有無と農民の灌漑行動を明らかにすることを第一の目的とした。約100筆の圃場をランダムサンプリングし馬鈴薯の単収を調査した。馬鈴薯栽培において、上流下流間で有意な収量格差は確認されなかった。むしろ、疫病に由来する単収変動が大きかった。灌漑システムの上流部と下流部との単収格差の不在は、上流と下流で同等の灌漑水を確保できている可能性を示唆している。その場合、夏馬鈴薯の栽培農家間で水配分の見直すインセンティヴは働きにくいし、水配分と定めるルールも必要とされないことになる。水配分という視点からの農民の組織化のインセンティヴは働きにくいと考えられた。第二にネパール・ビシ・ノウビシェ水利組合について、農家の灌漑水利用の実態と灌漑水の効果を調査した。この水利組合では各圃場への取水口に鍵をかけているため、農民が自分勝手に水を利用できない点がユニークである。上流から下流にかけて約60戸の調査対象農家を抽出した。ほぼ8割の農家は適度の水量を確保できており、6割の農家が適宜に水を利用できていた。農家戸数でみた作付体系は「米-馬鈴薯-馬鈴薯」が45%、「米-休閑-馬鈴薯」が42%であった。上流ほど「米-馬鈴薯-馬鈴薯」の作付パターンが多くみられた。作付集約度の平均は238%であり、馬鈴薯の導入は大きな経済効果をもたらした。この組合においては、水配分や水利施設の維持管理に関するルールがよく守られていた。この理由として、ほぼ全農家が取水口の鍵の効用をあげていた。鍵の効果は、そればかりでなく組合員相互の信頼関係の構築にも寄与していた。
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International Journal-of Woman, Social Justice and Human Rights Volume 2
ページ: 1-15
Journal of Applied Irrigation Science 42
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