研究概要 |
研究の目的 降雨や浸透水に起因する地盤災害,あるいは地盤の地表汚染に適切に対処し防止するためには,地盤の水理特性(透水性と保水性)を迅速にかつ精度良く評価する必要がある。このためには,地盤の広がりと深さ方向をトータルにとらえたサイト・キャラクタリゼーションを実現したシステムの開発が不可欠である。本研究では,これまでに開発を進めてきた原位置透水試験法に,新しく,地盤の礫含有率の評価ができるボアホールレーダならびにボアホール透水計を組み合わせることにより,地盤水理のサイト・キャラクタリゼーション・システムを開発する。現地実証試験を含めた3年間の研究期間を設定した。 本年度(〜平成18年3月31日)の研究実績概要 研究初年度における検討課題と研究経過は次の通りである。 1.地盤水理モデルの検証試験 地盤のトータルな透水性は,原位置透水試験によって測定されるピン・ポイントの地盤土の透水係数と地盤の礫率によって決定できる(地盤水理モデル)。室内で作製した小規模地盤に降雨を負荷したのち,地盤内から生じる流出量を測定し,数理モデル(有限要素法を用いた飽和・不飽和浸透流解析法)を利用して3次元浸透状況下における地盤水理モデルの有効性を確認した。 2.ボアホールレーダによる礫率測定試験 レーダ法で測定される反射波の減衰特性は,地盤土の比抵抗に反比例する。したがって,特定の礫含有率に調整した地盤での測定を繰り返すことによって,礫含有率に応じた反射波の特性化が可能となると考える。レーダ波の分析方法の習熟を含め,ボアホールレーダの性能を確認するための室内土槽試験を集中的に進めた。 3.定水位ボアホール透水計の試作と性能試験 地盤内に削孔したボアホール内にプローブを挿入し,その先端近傍の上部から,定水頭で浸潤を生じさせることにより,地盤土の透水性と保水性の測定が可能である。測定原理はおおむね把握していることより,有限要素法に基づく逆解析を用いて,水分量の時間変化の計測値から透水性・保水性を推定する方法を検討した。
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