研究概要 |
近年の地震発生確率は極めて高くなってきているとともに,多くの老朽化開水路は更新時期を迎え,維持管理の利便性から開水路のパイプライン化が進展してきているが,もとより線状構造物であるパイプラインは,曲がり部を多数有する複雑な構造物である.現在の設計手法では,パイプラインの曲部に発生するスラスト力(不平衡力)に抵抗するために,コンクリートブロックを打設し,その背面の受働土圧で支持する設計となっている.しかしながら,これらのブロックは,重量構造物であり地震時等に他の部分と位相差が生じるため,地盤の液状化と相まって破壊する主要因となっている.この様な背景より,軽量なスラスト防護工法の研究開発が急務であると考えられ,昨年度,小型模型実験によりジオシンセティクスを活用したスラスト防護新工法の有効性について明らかにした. 今年度は,ジオシンセティクスを鉛直方向に配置した防護方法の実大規模実験を行い,提案工法の施工性の確認や,ジオグリッドの強度などが,当工法の有効性に与える影響について検討した.その結果,以下のことが明らかになった. 1.負荷したスラスト力と土圧計の実測結果から求めた水平抵抗力は同等の荷重レベルであり,実験の整合性が確認できた. 2.当提案工法により付加された抵抗力は曲管の抵抗力に対し,最大で6割程度であり,当工法の実用規模における有効性が認められた. 3.ジオグリッドに発生する延伸方向のひずみは,引抜き側から徐々に低下するが,ジオグリッド後端部では0とはならず,プレートによる受働抵抗が発揮されていることが確認された.また,深度方向のひずみの変化は小さく,管径が小さい場合無視できることがわかった. 4.当工法で用いられるジオグリッドの剛性および長さは,プレートによる受働抵抗や地盤との摩擦抵抗の大きさに影響する.
|