研究概要 |
近年の多発する地震ならびに,老朽開水路の更新を背景に,開水路のパイプライン化が進展してきている.しかしながらパイプラインは,曲がり部を多数有する複雑な構造物である.現在の設計手法では,パイプラインの曲部に発生するスラスト力に抵抗するために,コンクリートブロックを打設し,その背面の受働土圧で支持する設計となっているが,これらは重量構造物であり地震時等に他の部分と位相差が生じるため,弱点となっている.この様な背景より,軽量なスラスト防護工法の研究開発が急務であると考えられ,一昨年度より,小型模型実験によりジオグリッドを活用したスラスト防護新工法の有効性について明らかにするとともに,ジオグリッドの伸びを考慮した設計手法の提案までを遂行した. 今年度は,(独)農村工学研究所の所有する大型3次元振動台を用いて,提案耐震工法ならびに従来工法であるコンクリートブロックを用いたφ200の模型パイプラインを対象として,大規模な振動台実験を実施し,定量的な評価を行った。さらに,(独)水資源機構の協力を得て,φ800実用管路にて,当工法の施工性・安全性の確認までを遂行した.その結果,以下のことが明らかになった. 1.液状化地盤において,従来用いられるコンクリートブロックは大きく移動し,隣接管との間に大きな隙間が発生し,極めて危険である. 2.当提案工法を用いた場合,曲管部の水平移動量は小さく,液状化地盤において,耐震性に優れている. 3.特に,ジオグリッド周辺に砕石を用いる場合,ジオグリッドによる引抜き抵抗力は大きく,曲管部の移動量は極めて小さくなる. 4.φ800の実用管路の敷設替え施工に,当提案工法を採用し,通水時の埋設挙動計測を行い,内圧の上昇に際して,水平反力が大きくなるものの,移動量はほとんど発生せず,実用規模レベルにおいても,当工法は極めて有用な耐震工法であるといえる.
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