研究課題/領域番号 |
17380146
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
瀬口 昌洋 佐賀大学, 農学部, 教授 (20093974)
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研究分担者 |
加藤 治 佐賀大学, 農学部, 教授 (40038295)
加藤 富民雄 佐賀大学, 農学部, 教授 (90109223)
神田 康三 佐賀大学, 農学部, 教授 (00117095)
田端 正明 佐賀大学, 理工学部, 教授 (40039285)
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キーワード | 有明海 / 貧酸素水塊 / 溶存酸素 / 塩分 / 酸素消費速度 / 密度躍層 / 鉛直拡散係数 / 懸濁態有機物 |
研究概要 |
有明海奥部西岸域の2地点でDoPa型多項目計測装置を用いて、7月〜9月の夏季に海底付近の流速、DO、塩分等の現地観測を行った。また、その間、2回にわたり船上から電磁流速計や多項目水質計を用いて、DO、塩分等を横断及び縦断方向に測定し、貧酸素水塊の発生時における海洋構造を観測した。さらに、DoPa型多項目計測装置を設置した2地点で、約1周期にわたり流速、塩分、クロロフィル-aの鉛直プロフィルの経時変化を測定すると同時に、2地点で底泥と深さ50cm毎の海水を採取し、酸素消費実験を行った。一方、過去29年間の奥部西岸域の浅海定線データに2層ボックスモデルを適用し、各月の密度成層強度、鉛直拡散係数及び定層の酸素消費速度を算定した。最後に、これらの観測、分析及び解析の結果に基づいて、奥部西岸域における貧酸素水塊の発生機構について検討、考察した。その結果、明らかとなった主な点を要約すると、次のようになる。 1.2地点での鉛直流成分から密度成層期における鉛直拡散係数の分布性が明らかにされた。すなわち、鉛直拡散係数は表層及び底層で高く、密度成層下端付近で大きく低下した。したがって、密度躍層の形成は表層から下層への酸素供給量を大きく抑制するものと考えられた。 2.2地点における底層の酸素消費速度は底層・底質の酸素消費速度の約60〜80%を占めた。また、両地点における底層の酸素消費速度は底層中の縣濁態有機炭素の増加に伴って増大した。したがって、表層の植物プランクトンの死骸や底質から巻き上げられた有機物は底層の酸素消費速度を大きく左右するものと推察された。 3.密度成層強度は夏季に増加し、冬季に減少した。また、逆に鉛直拡散係数は夏季に減少し、冬季に増加した。一方、底層の酸素消費速度は、夏季に正の値すなわち消費を、また冬季に負すなわち生産を示した。したがって、夏季の貧酸素水塊の発生は、底層の酸素消費量と表層から底層への酸素供給量のアンバランスに因るものと考えられた。
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