食品や農畜産物中の非破壊、非侵襲による異物検出法として、電気インピーダンス・トモグラフィの開発とそれによる食肉加工品中に設置した金属、プラスチック、或いは、空孔の画像化、位置検出を試みた。 1.電気インピーダンス・トモグラフィは、測定試料の表面電位を測定し、試料内部の導電率、或いは、体積抵抗率の分布を推定し、画像化する方法である。そこで、最初に、食品の体積抵抗率を測定し、異物の値と比較、考察した。測定した食肉試料の体積抵抗率は130-180Ω-cm、パン生地は100〜1000Ω-cmの範囲にあり、金属やプラスチックの体積抵抗率とは、桁数で10^8〜10^<14>の大きな差異があり、それらの異物検出に電気インピーダンスを用いる優位性が見出された。 2.電気インピーダンス・トモグラフィでは、試料の周囲に設置した16点の電極を介して、信号発生器による電流注入と周波数特性分析器(又はロックインアンプ)による電位測定を行うデータ収集システムを構築した。データ収集は隣接法によった。また、測定データから体積抵抗率分布の画像を、ニュートンラブソン法の逆解析により再構成するコンピュータソフトウェア・アルゴリズムを作成した。不適切問題の解にはチクホフの正則化法を用いた。 3.構築したEITシステムをハンバーグミンチ肉、寒天ゲル、パン生地の試料に適用した。試料には、異物として、金属(銅管)、プラスチック(テフロン円柱)、空孔を設置し、それらの位置と大きさの検出を試みた。その結果、測定データに含まれる雑音の影響により、異物の直接の画像化は困難であったが、異物を含まない状態の抵抗値分布との差分抵抗値により、異物、空孔の画像化と位置検出が可能であった。異物の画像化の感度は、材料内の電流密度に影響を受けるため、材料厚さや表面・側面電極の差異に影響を受けることを明らかにした。
|