研究概要 |
肉骨粉糖の処理において,付加価値を高めた有価物として再利用を図る場合,その蛋白質構造が完全に破壊されていて,感染性の危険が全くないことを確認しなければならない。低温炭化物化処理は肉骨粉や家畜屠体に限らず汚泥などの有価物化においてもこのような要求に答え得る方法と考えられる。500℃〜600℃の低温で炭化し,表面の賦活処理を施した炭化物は,吸着剤として機能し得る比表面積等を有するとともに,農地還元した場合に重要な溶解性リン酸としてリンを含有するなどの特徴を有している。これは従来の800℃以上の炭化処理に比べ,溶解性リン酸量のほかにも,歩留りや製造コストなどの点で大きく有利となる。試料として肉骨粉やハムスター脳を用いた炭化試験において,炭化物およびその抽出物に対してラマン分光法,FTIR, SEM・EDX等によって炭化度,表面状態の観察および表面元素・官能基の分布等を検討した。その結果500℃〜600℃においても,確実に1時間程度の熱処理がなされれば蛋白質構造が完全に破壊され,炭化が進行した構造の炭化物が得られることが判明した。これは,農水省動物衛生研究所プリオン研究センターと共同して実施したBSE感染ハムスター脳低温炭化物のトランスジェニックマウスへの脳注入試験結果においても確認された。(発症率は注射後1年経過してゼロ。未炭化処理脳では発症率10割程度)低温炭化処理においては,炉材にステンレス鋼などを使用することができる。そのため均一な炭化を行う炉の設計も容易になり,また,装置製造コストも大幅に低減できることになった。
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