本研究では、電気化学的計測技術を応用した家畜生殖細胞の呼吸量計測法を確立し、これを応用した家畜生殖細胞機能評価システムの開発を目的とした。本年度は、走査型電気化学顕微鏡を用いてウシ・ブタの卵子・胚の呼吸量測定を行い、家畜生殖細胞機能評価システムの基盤構築のためのデータ収集と胚移植試験を中心に行い、電気化学的イメージング技術を応用した呼吸測定の有効性と安全性の検証を行った。その結果、以下の研究成果が得られた。 1. 生殖細胞機能評価システムの開発 : 卵成熟過程において呼吸量とATP含量が多い卵子は高い成熟能を示すことから、家畜卵子では卵子の品質とミトコンドリア呼吸機能が密接に関連していることが明らかになった。 2. 呼吸測定の有効性および安全性の検討 : 胚発生過程において呼吸量の増加とミトコンドリアの発達が一致したことから、走査型電気化学顕微鏡によるミトコンドリア呼吸機能解析の有効性が示された。呼吸測定したウシ胚の培養試験及び移植試験の結果、走査型電気化学顕微鏡を用いた呼吸測定は非侵襲的計測技術であり、品質良好胚の選別に有効であることが示された。 3. 呼吸測定システムの開発 : 胚培養液を基本成分とする呼吸測定液、複数試料の呼吸測定を可能とする多検体プレートの開発に成功した。走査型電気化学顕微鏡をベースに、各要素技術をシステム化した家畜生殖細胞呼吸測定装置を開発した。
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