研究課題
まず、遺伝子発現のリプログラミングが起こる前後の成長期卵と受精後の初期発生期胚について、様々なエピジェネテック調節に関わるヒストン修飾を調べた。その結果、卵が成長する過程において、調べたすべてのヒストン修飾が増加していた。特に、遺伝子発現が停止する生後15日を過ぎた仔マクスから得られた卵(直径50μm程度)で急激にこれらの修飾の増加が見られたが、その中には遺伝子発現の活性化に関与すると考えられているヒストンH4のアセチル化やヒストンH3K4のメチル化なども含まれていた。したがって、これらの修飾の増加は、体細胞などで見られる遺伝子発現調節に関する機能とは異なる、ゲノム全体のリモデリングに関わってものであることが考えられる。また、発生能力のないNSN(non-surrounded-nucleolus)型の核を持つGV期卵では、調べたすべてのヒストン修飾が低かった。このことは、NSN型核をもつ卵では、ゲノムのリモデリングが正常に進まず発生能力がないことを示唆しており、このような卵はゲノムリモデリングを研究するための有効な材料となるかもしれない。また、受精後のヒストン修飾の変化を調べたところ、着床期前初期発生過程で様々な修飾が大きく変化していることが明らかとなった。次に、ゲノム全体ではなく、個々の遺伝子についてそのヒストン修飾を調べる実験系の確立を試みた。哺乳類の卵や初期胚ではヒストン修飾の解析を行うクロマチン免疫沈降法に必要なだけの十分な量の材料を得ることが難しいからである。この問題を解決するため、調べたい遺伝子の調節領域を持つcDNA断片を卵あるいは初期胚に顕微注入してクロマチン構造を形成したものについてクロマチン免疫沈降法を行うというものである。この手法については、現在様々な条件検討を行っている途中であり、今後その確立を目指す予定である。
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