研究概要 |
本年度に得られた成果の概要は以下の通りである。 1.標的遺伝子における多型のリストアップ(平成17年度より継続);これまでに気質に関連すると考えられる脳内モノアミン関連遺伝子を中心とした,12遺伝子28多型の遺伝子型判別を可能とした。 2.オーストラリア探知犬における行動テストの解析;Chase, Retrieve and Huntテストを因子分析したところ,6ヶ月齢と12ヶ月齢のいずれにおいても3因子が抽出され,執着心,所有欲,独占欲という因子の構成成分から所有欲成分と名付けた因子2では,12ヶ月齢での因子得点について探知犬としての合否群間で有意差が認められた。一方,Temperamentテストを主成分分析したところ,6ヶ月齢と12ヶ月齢のいずれにおいても主成分は一つに収束されたが,やはり12ヶ月齢において主成分得点に合否間での有意差が認められた。さらに強化訓練スコアについて主成分分析を行い合否との関連を調べたところ,各月齢の主成分は一つに収束され11ヶ月齢と12ヶ月齢時において合否群間で主成分得点に有意差がみられた。 3.オーストラリア探知犬における遺伝子多型解析;合否に影響を与える成分と各多型について関連を解析したところ,12ヶ月齢のTemperament主成分得点とTyrosine Hydroxylase-G168アレルおよびCatechol-O-methyltransferase(COMT)482Aアレルが,11ヶ月齢強化訓練主成分得点(n=68)とSerotonin receptor 1A-808Aアレルが,有意に関連することが判明した。これらの結果より,探知犬の合否には複数の遺伝子多型が影響していることが推察された。 4.オーストラリア探知犬における早期合否予測の可能性;これまであまり重視されていなかった「強化訓練スコア」を中心に行動評価の統計成分と遺伝子マーカーの情報を併せて判別分析を適用したところ,7ヶ月齢という比較的早期のデータをもとに探知犬としての最終的な合否を一定の精度で予測できることが示された。
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