研究概要 |
大型哺乳動物の原始卵胞卵母細胞に胚発生能を付与する手法の開発の一環として、初年度は、ブタ卵巣を移植したヌードマウスに性腺刺激ホルモンを投与し卵胞発育を促進することによって、原始卵胞卵母細胞に胚発生能を付与できるかを検討した。原始卵胞から成る生後20日齢のブタ卵巣を卵巣摘出ヌードマウスの腎皮膜下に移植した。膣開口後60日に、マウスに妊馬絨毛性性腺刺激ホルモン(eCG)の投与,またはブタFSHを充填した浸透圧ポンプの皮下留置を行った。移植卵巣および末梢血をeCG投与2日(eCG-2)または3日後(eCG-3)、FSH投与7日間(FSH-7)または14日間後(FSH-14)に採取した。またLHサージを抑制する目的で、FSH処理開始7日後に抗エストラジオール血清を投与した(FSH-14AS)。その結果、ホルモン処理群、特にFSH-14AS群では胞状卵胞の発育が顕著であったが、FSH-14群では胞状卵胞の多くが血腫となった。マウスの血中インヒビン濃度は胞状卵胞の発育状況に対応して上昇した。直径115μm以上の卵母細胞のマウス1匹あたりの採取数は,eCG-3(68±11個),FSH-7(60±11)およびFSH-14AS群(49±9)において,性腺刺激ホルモンを投与しなかった対照群(18±5)に比較して明らかな増加を示した。体外成熟後,上記3処理群(eCG-3;13±3,FSH-7;21±4およびFSH-14AS;16±5)では対照群(4±1)に比較して多数の卵母細胞が成熟した。さらに100個前後の成熟卵子を体外受精し7日間の体外培養した結果,eCG-3、FSH-7およびFSH-14AS群においてそれぞれ1卵子ずつ胚盤胞へと発生した。以上の結果から,マウスに適切なホルモン処理を施すことによって,移植したブタ原始卵胞卵母細胞に胚発生能を付与できる可能性が示された。
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