研究課題
レトロウイルス科レンチウイルス属に分類されるヒト免疫不全ウイルスは、ヒトにAIDSを引き起こし、人類にとって大きな脅威になっている。霊長類以外の動物にもレンチウイルスが存在し、獣医領域においては、ウマ、ヒツジ、ヤギのレンチウイルス感染症が古くから問題になっていた。家猫にも病原性のあるネコ免疫不全ウイルス(FIV)が感染していることが明らかとなり、大きな問題になっている。大型ネコ科動物もレンチウイルスをもっており、これらは病原性がなく宿主と共存状態になっていることが最近明らかになった。レンチウイルスの宿主域決定機構を解明することは、新たなレンチウイルス感染症を防御する上で非常に重要である。本年度はネコのグリア細胞由来株化細胞G355-5におけるFIVの感染メカニズムを解析した。G355-5細胞において、FIV Petaluma株は主受容体であるCD134を必要としなかったが、TM2株は必要とした。しかし、逆にPetaluma株はCD134を発現させると感染はむしろ抑制され、TM2株は感染は成立するもののウイルスの放出が抑えられた。しかし、TM2株感染G355/fOX40細胞においては、感染後50日でFIVは細胞から放出されるようになり、またCPEをほとんど示さず持続感染状態になった。このウイルスをTM2PI株と命名し、詳細に解析したところ、TM2PI株はCD134非依存的にG355-5細胞に感染するように変異していた。さらに我々は、CD134細胞発現G355-5細胞において、FIV感染が抗体依存的に増大することを見いだした。本研究からFIVの感染には、主受容体からの感染の他に様々な経路が存在することが示唆された。また、本研究で得られたTM2PI株は既存のFIVワクチンの改良に有用であると考えられた。
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Journal of Veterinary Medical Science (印刷中)
Journal of Virological Methods (印刷中)
Journal of Veterinary Medical Science 69
ページ: 81-84
JVM獣医畜産新報 60
ページ: 722-730