人類は新興再興感染症の脅威に晒されている。そのほとんどは人畜共通感染症である。本研究では、特に呼吸器侵襲性感染症に効果的な人体、あるいは動物用の新規療法の研究開発を目的とする。本年度は、高病原性鳥インフルエンザウイルスのワクチン開発の緊急性に鑑み、その不活化ワクチン作製におけるシードウイルス候補株の構築に関する研究を継続した。H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスは、現在までにいくつかの異なった遺伝子集団(クレード)に進化している。それに伴い、ウイルス抗原性が変化している。そこで、各クレードのワクチンを試作し、それらの交差抗原性をマウスモデルで検証した。その結果、全てのワクチンは別のクレードのウイルスの感染に対し、一例を除き、完全なあるいは部分的な交差反応性を示すことがわかった。クレード2.2のワクチンは、クレード2.3.4のウイルスの感染を防御できなかった。一方、特に、クレード2.1ワクチンは非常に広範な交差抗原性を示すことがわかった。したがって、現在備蓄されているワクチンは、ある程度抗原性が異なるウイルスによるパンデミックが発生した際にも、バックアップワクチンとして有効であることが推測される。これらの知見は今後の効果的なワクチン産生に大いに貢献するものと期待できる。
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