研究課題
我が国において高病原性鳥インフルエンザが発生した際に、鶏肉・鶏卵に対する風評被害が起こる最大の理由は鶏関連食品中における本ウイルスの感染性あるいは物理化学的抵抗性に関する確実な基礎データがこれまでほとんど蓄積されてこなかった点にある。すなわち鶏が高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した場合、鶏肉や鶏卵中にどの程度のウイルスが残存し、それがどのような処理によって完全に除かれ得るのかなど具体的な実験データが本病に対する国民の食の安全・安心問題には必要不可欠であろう。そこで本研究では今年度、不活化ワクチン接種鶏への高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染を想定し、ウイルスの体内分布(筋肉内、内臓、生殖器系および卵)を解析する目的で、まず、2種の候補不活化ワクチンを作成し、各々のワクチンを接種した鶏において確実な免疫応答を確認した。この成績に基づき、最終年度は不活化ワクチン接種鶏への感染実験を実施する。また、昨年度に引き続き、鳥インフルエンザウイルスの自然界における残存の程度を調べる目的で高病原性ウイルスと低病原性ウイルスを各々滅菌蒸留水、滅菌生理的緩衝液、水禽類が飛来する湖沼の天然水にそれぞれ浮遊させ、温度を変えて(4℃および20℃)、経時的にウイルス感染価の推移を測定した。その結果、いずれの条件下でも観察した30日目までに感染価の大幅な低下は認められず、水中の鳥インフルエンザウイルスの安定性が確認された。さらに各々のウイルス株を混合させた鶏糞を一定条件下で保存し、経時的にウイルス感染価の推移を測定した結果、4℃で30日間、20℃では7日間、感染性が残存することが確認された。これらの成績は鳥インフルエンザに対する防疫対策の確立あるいは鶏関連食品の安全性確保の一助となるものと期待される。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件)
J. Gen. Virol. 88
ページ: 547-553
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