研究課題
2004年に続き、2007年には宮崎県および岡山県の養鶏場で再びH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザの流行が認められた。今回の流行ではいずれも現場における早期発見、早期報告がなされ、それに続く殺処分、埋・焼却の迅速な防疫対応も功を奏して、流行規模は最小限に抑えられ、続発も確認されなかった。そのため、2004年と比較して、国民の鶏肉・鶏卵の安全性に対する不安や風評被害の程度もずいぶんと小さかった。しかし、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合、鶏肉や鶏卵にどの程度のウイルスが残存し、それがどのような処理によって完全に除かれ得るのかなど具体的な実験成績が未だ明らかとなっていない。そこで本年度は産卵鶏に高病原性鳥インフルエンザウイルスを実験感染させ、産卵への影響や感染後に生まれた鶏卵中のウイルス量を調べた。鶏はウイルス感染前から感染後2日目までほぼ毎日産卵し、3日後にすべて死亡した。死亡した前日の卵からウイルスは検出されなかった(検出感度以下)が、死亡直前に生まれた2個の卵のうち、1個から10の2.5乗個のウイルスが検出された。その鶏では肺のみならず、卵管、卵巣、成熟卵胞からも高濃度のウイルス(10の5.5乗個以上)が検出された。以上の成績から、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏が死亡直前に産んだ一部の卵にはウイルスが含まれている可能性があるものの、そのウイルス量から考えて、また国内発生時の早期発見、早期防疫対応によってその感染鶏の生んだ卵が市場にで出廻ることがほとんどない状況も考慮すると、鶏卵を食用とすることで人が高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染する可能性は極めて低いことが示唆された。
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