研究課題
基盤研究(B)
2007年、宮崎県および岡山県の養鶏場で再びH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザの流行が認められた。この流行ではいずれも現場における早期発見、早期報告がなされ、それに続く殺処分、埋・焼却の迅速な防疫対応も功を奏して、流行規模は最小限に抑えられ、続発も確認されなかった。そのため、2004年の発生時と比較して、国民の鶏肉・鶏卵の安全性に対する不安や風評被害の程度もずいぶんと小さかった。しかし、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合、鶏肉や鶏卵にどの程度のウイルスが残存し、それがどのような処理によって完全に除かれ得るのかなど具体的な実験成績が未だ明らかとなっていない。そこで本研究では鳥インフルエンザウイルスに対する(1)一般的な消毒薬の効果(2)湖沼水中における感染性の残存(3)感染後の鶏卵中のウイルス量を調べた。その結果、(1)70%エタノールおよび70%イソプロパノールではわずか10秒で0.1%塩化ベンザルコニウム、0.5グルコン酸クロルヘキシジンおよび500倍希釈パコマについても10分以内に鳥インフルエンザウイルスは検出感度以下にまで失活したことかちこれらの消毒薬の有効性が確認された。(2)鳥インフルエンザウイルスを湖沼天然水に浮遊させ、4℃および20℃で経時的にウイルス感染価の推移を測定した結果、観察した30日目までに感染価の大幅な低下は認められず、水中の本ウイルスの安定性が確認された。(3)感染鶏の死亡前日の卵からウイルスは検出されなかったが、死亡直前に生まれた2個の卵のうち、1個から10の2.5乗個のウイルスが検出された。しかし、鶏卵を食用とすることで人が高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染する可能性は極めて低いことが示唆された。本研究で得られた成績は養鶏産業界のみならず食品産業界や一般家庭における鳥インフルエンザ対策のためにも有用な情報を提供するものである。
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