研究課題/領域番号 |
17380187
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
岩崎 利郎 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 教授 (50262754)
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研究分担者 |
桃井 康行 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 助教授 (40303515)
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キーワード | 犬 / 天疱瘡 / ELISA / デスモゾーム / デスモグレイン1 / デスモグレイン3 |
研究概要 |
犬の表皮ケラチノサイトの接着に関わる、代表的なデスモゾーム蛋白であるデスモグレイン1およびデスモグレイン3、デスモコリン1の細胞外部分をシークエンスし、細胞外部分の融合蛋白を、立体構造を保存するためにバキュロウイルスを用いて作成した。蛍光抗体法を用いた吸収試験、免疫沈降方一免疫ブロット法などにより、ヒトのデスモグレイン1を標的蛋白とする落葉状天庖瘡血清、ヒトのデスモグレイン3を標的蛋白とする尋常性天庖瘡血清が、それぞれ犬のデスモグレイン1融合蛋白、デスモグレイン3融合蛋白と反応し、吸収することを確認した。次にこれら融合蛋白を用いて尋常性天庖瘡の犬血清6例、腫瘍随伴性天庖瘡の犬血清1例、増殖性天庖瘡の犬血清1例および落葉状天庖瘡の犬血清44例を用いてELISAを行った。これらの犬の診断は特異的な臨床症状と病理組織学的に棘融解細胞と好中球/好酸球を含む水庖または膿庖が存在すること、患者犬の皮膚を用いた直接蛍光抗体法または免疫ペルオキシダーゼ反応でIgGクラスの免疫グロブリンの沈着が表皮細胞間に存在すること、およびliving keratinocyteを用いた間接蛍光抗体法で患者血清中に表皮間物質に対する自己抗体を証明できたもの、という基準に基づいて行った。また、正常犬54例の結成および他の皮膚疾患8例の血清を比較に用いた。その結果、尋常性天庖瘡血清は6例中4例の症例でデスモグレイン3融合蛋白と反応して、高い抗体価を示した。また、正常犬血清は融合蛋白との反応はバックグラウンドレベルであった。以上のことからデスモグレイン3融合蛋白を用いたELISA法は犬の尋常性天庖瘡の診断に有用であると考えられた。一方、デスモグレイン1融合蛋白を用いたELISAでは、犬の落葉状天庖瘡患者血清が示す抗体価は正常群と比較して有意差は示すものの、デスモグレイン1融合蛋白と全く反応しない固体も少なからず存在し、また抗体価が正常犬と交差する部分があることもあり、診断に有用なカットオフ値を設定することは困難であった。したがって、犬の落葉状天庖瘡のELISAによる診断を行うには、デスモグレイン1融合蛋白のみならず、他の細胞間接着蛋白の検討がさらに必要なことがわかった。
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