マングローブ植林技術開発のための基礎的知見を得ることを目的として、ヒルギ科マングローブ幼植物の根への02供給が成長に及ぼす影響について調査した結果、以下の知見を得た。 1.生育現地での調査により、潮位上昇に伴う胚軸の水没によって、幼植物胚軸内02濃度が低下したことから、大気から胚軸内へ02が拡散することが確認できた。また、胚軸での光合成反応によって02が生成されることを解明した。根内02濃度は胚軸内よりも低かったことから、02が胚軸から根へ拡散することを解明した。胚軸の遮光および水没は胚軸内および根内02濃度を低下させ、葉のガス交換を抑制した。 2.温室での実験により、幼植物胚軸の水没によって胚軸から根への02拡散速度および葉のガス交換速度が低下した。メヒルギ幼植物では、胚軸の遮光によって胚軸から根への02拡散速度および葉のガス交換速度が低下した。胚軸の遮光および水没が同時に起こるとき、オオバヒルギ、フタバナヒルギ、メヒルギ、コヒルギ、オヒルギおよびヤエヤマヒルギ幼植物の胚軸から根への02拡散速度および葉のガス交換速度が低下した。 3.胚軸での光合成反応および大気から胚軸内への02拡散抑制の継続によって、マングローブ幼植物が枯死することが明らかとなった。またヤエヤマヒルギはオヒルギに比べて、幼植物の胚軸表面での通気が抑制されたときの生存率が高くなり、胚軸の02拡散機能が樹種により異なることを確認した。 4.胚軸表面積の1/3程度が大気から胚軸内への02拡散および胚軸での光合成反応による02生成機能を維持することで、胚軸から根への02拡散速度を低下させず、幼植物の生存率を維持できることを明らかにした。
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