研究課題
基盤研究(B)
ヒルギ科マングローブ幼植物の胚軸・根内O_2濃度、胚軸から根へのO_2拡散速度および葉のガス交換速度について検討した。その結果、マングローブ実生においてO_2は濃度勾配に従って胚軸から根へ拡散すること、また胚軸内のO_2は大気からの拡散および胚軸での光合成によって供給されていることを解明した。コヒルギおよびメヒルギでは、大気から胚軸内へのO_2拡散抑制により胚軸から根へのO_2拡散が抑制され、葉のガス交換速度が低下した。胎生種子で繁殖するマングローブであるフタバナヒルギおよびヒルギダマシを用いて、幼植物の胎生種子由来部分を水没させた水没区、アルミニウムフィルムで遮光した遮光区、これらを組み合わせた水没遮光区、および無処理の対照区を設けた。その結果、フタバナヒルギでは、処理開始から約4カ月後に水没区および水没遮光区の生存率は低下し始め、その後短期聞で大きく低下した。ヒルギダマシでは、処理後8日目に水没区、遮光区および水没遮光区の植物の伸長は抑制され始め、実験終了時(27日目)のこれらの区の植物高は無処理区の0.6-0.8倍であった。水没区および水没遮光区の全乾物重はそれぞれ無処理区の0.8および0.7倍であった。特に水没区および水没遮光区での葉の成長が抑制された。胚軸での光合成反応および大気から胚軸内への02拡散抑制の継続によって、マングローブ幼植物が枯死することが明らかとなった。またヤエヤマヒルギはオヒルギに比べて、幼植物の胚軸表面での通気が抑制されたときの生存率が高くなり、胚軸の02拡散機能が樹種により異なることを確認した。また胚軸表面積の1/3程度が大気から胚軸内への02拡散および胚軸での光合成反応による02生成機能を維持することで、胚軸から根への02拡散速度を低下させず、幼植物の生存率を維持できることを明らかにした。
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(In "Greenhouse Gas and Carbon Balances in Mangrove Coastal Ecosystems, Edt. Y. Tateda)
ページ: 109-117