研究課題
基盤研究(B)
メチルグリオキサール(MG)は解糖系から派生する代謝物である。しかしながらMGは、その反応性の高さからDNA、RNA、タンパク質などとin vitroでadductを形成することが報告されており、結果的に細胞機能に異常を引き起こすと考えられている。また、細胞内MGレベルの上昇は糖尿病やある種のがん(肺がんや大腸がん)などの疾患との関連が指摘されているが、そのメカニズムの詳細についてはほとんど明らかになっていない。その最大の理由は、MGの作用点とその作用機序がほとんど明らかにされていないことにある。私は、MGは単なる代謝中間体ではなく、シグナルイニシエーターとして細胞生理に対して積極的な役割を持ち、MGの代謝異常によって不必要、あるいは必要以上のシグナルが流れることで細胞機能が破綻し、種々の疾患が引き起こされるのではないかという作業仮説をたてている。そこで本研究課題では、高等真核生物のモデル系として確立されている酵母を用い、(1)MGが作用する標的分子の同定と(2)MGが引き起こす細胞応答機能の解明、ならびに(3)MGによる細胞機能障害の分子機序の解明を試みた。その結果、MGが酵母のp38MAPキナーゼホモログであるHog1やSpc1を活性化することを見いだした。さらに、MGの主要代謝酵素グリオキサラーゼIが欠損した分裂酵母変異株では、MGによるSpc1のリン酸化状態が長時間継続することを見いだし、その原因として、MGがSpc1を脱リン酸化するプロテインホスファターゼを阻害することで、Spc1のダウンレギュレーションを抑制していることを明らかにした。
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