研究概要 |
アルコール類のカルボニル化合物へ環境調和・高効率的酸化を可能とするアザアダマンタンN-オキシル(azaadamantane N-oxyl:以下AZADOと略記)型触媒の機能性を開発し、精密合成化学的展開のための基盤構築を目指して検討を行い、下記の成果を得た。 (1)AZADO型触媒の構造-機能相関の解明 AZADO,1-Me-AZADO,1,3-dimethyl-AZADO,および9-azabicyclo[3.3.1]nonane N-oxyl (ABNO)を合成して、それらのアルコール酸化触媒活性を検討した。その結果、1,3-dimethyl-AZADOは、1級アルコール類の酸化についてはAZADOと同等の活性を示したが、立体的に嵩高い2級アルコールを基質とした場合、その活性はTEMPO(1,1,6,6-tetramethyl-piperidinyl-1-oxyl)の活性程度まで低下することが判明した。またABNOはAZADOと同等の高い触媒活性を示すことも確認された。これより、ニトロキシルラジカルによるアルコールの触媒的酸化の効率と基質応用性は、アザアダマンタン構造に限定されるものではなく触媒中心近傍の立体的要因が決定的に影響するものであることが明らかとなった。 (2)光学活性AZADOの合成とエナンチオ選択的アルコール不斉酸化触媒の開発 AZADOの合成中間体をエナンチオ選択的に修飾して、多様な光学活性AZADO誘導体を合成する経路を開発した。これらキラルAZADOを触媒として、種々のラセミ2級アルコールの速度論的分割反応を検討し、これまで40%eeの不斉収率が得られる系を見い出すことができた。 (3)固相担持型AZADOの合成と応用 AZADOの機能特性を固相に連結した高分子を合成して、不均一触媒として活用するための基礎的検討を行った。これまで、ポリスチレン樹脂に結合させる2種類の方法を開発できた。いずれの固相担持AZADOも、均一系反応と同等の活性を維持していることを確認できた。
|