研究概要 |
前年度に引き続き、当研究室で開発したアザアダマンタンN-オキシル(azaadamantane N-oxyl:以下AZADOと略記)型触媒の機能性を開発し、アルコール類のカルボニル化合物へ高効率的酸化を鍵とする精密合成化学的展開のための基盤構築を目指して検討を行い、下記の成果を得た。 (1)AZADO型触媒の構造-機能相関の解明 AZADO,9-azabicyclo[3.3.1]nonane N-oxyl(ABNO),8-azabicyclo[3.2.1]octane,7-azabicyclo[2.2.1]heptane,を合成して、それらの安定性とアルコール酸化触媒活性を検討した。その結果、ビシクロ骨格として[3.2.1]octaneおよび[2.2.1]ヘプタン型骨格は不安定で触媒が分解することが判明した。これより、アルコールの触媒的酸化活性を有するビシクロ型ニトロキシルラジカルの構造要因を特定することができた。 (2)光学活性AZADOの合成とエナンチオ選択的アルコール不斉酸化触媒の開発 AZADOの合成中間体をエナンチオ選択的に修飾して、多様な光学活性AZADO誘導体を合成した。これらキラルAZADOを触媒として、種々のラセミ2級アルコールの速度論的分割反応を検討し、不斉収率を50%eeまで向上させることができた。 (3)固相担持型ABN00の合成と応用 ABN00の機能特性を固相に連結した高分子を合成して、不均一触媒として活用するための基礎的検討を行った。その結果、ポリスチレン樹脂に結合した固相担持ABN00も、均一系反応と同等の活性を維持していることを確認できた。
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