研究概要 |
医薬品の多くは多環上に複数の官能基を配する構造をとっている。これは官能基の三次元的な関係が環上に存在することによって固定されるためと考えられる。そこで目的の多環構造を効率的に構築する方法を確立することは、創薬研究の重大な課題である。一方、合成化学においては一回の反応操作で複数の結合を形成させることは、反応行程を短縮させて経済的であり、このことは資源保護に繋がるためにグリーン・ケミストリーの観点から最近多大な注目を集めている。本研究では多成分系による連続的触媒反応によって4,5,6員環をそれぞれ持つ多環系の効率的構築法を確立して、これを用いて、生理活性なテルペン等の合成を検討した。 また、イオン・ラジカル・金属錯体などの各活性種の特徴を活用した多元的な多連続反応の基礎実験を継続し、潜在している連続反応の可能性と限界を明確にすることによって合成技術と理論の体系化を試みた。さらに、酸化還元反応を起こしうる反応剤を共存させること、および、異なる反応活性種を同一系内で利用するハイブリッド反応の開発を行い、連続反応の多様性を検討した。その結果、水素原子の1,5-移動に引き続くラジカル環化反応を鍵反応として、重要な生理作用を持つハリクロリンおよびピンナ酸の合成を完成できた。 一方、パラジウム触媒存在を用いて炭酸ガスの脱離と再取込みを行うことによって、基質とは構造の全く異なる成績体を得ることができた。本反応をさらに拡大する目的で、多様な不飽和結合を持つ化合物への適用と触媒の検討を行なった。
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