微小空間を活用する効率的有機合成反応の研究開発を行い、以下の成果を得た。 (1)マイクロチャネルリアクターを指向した高分子固定化触媒反応の開発 筆者はこれまでに、独自に開発した高分子固定化パラジウム触媒をマイクロチャネルリアクターに固定化し、水素を用いる効率的な気相-液相-液相の三相系水素化反応を開発している。今回さらに発展させ、スカンジウム・ルテニウム・金など種々の金属を高分子に固定化し、ルイス酸触媒反応や酸素を用いる三相系酸化反応を行ったところ、反応は高い収率で進行することが明らかになった。また、高分子固定化パラジウム触媒を用いる水素化反応において、高分子として炭素ポリマー以外にポリシランも有効であることを見出した。 (2)マイクロチャネルリアクターを用いる効率的触媒反応の開発 ポリシラン担持型パラジウム触媒をマイクロチャネルリアクターに固定化して水素化反応を行ったところ、連続100時間の運転が可能であり、またこのマイクロチャネルリアクターは15回の繰り返し使用が可能であった。また、高分子に担持させた金触媒をマイクロチャネルリアクターに固定化して酸素を酸化剤とする気相-液相-固相の三相系アルコール酸化反応を行ったところ、反応は円滑に進行し、対応するカルボニル化合物を得ることができた。一方、マイクロチャネルリアクターでの反応を大量合成に適用することを指向し、マイクロチャネルリアクターのナンバリングアップの検討を行った。その結果、水素化反応の生産性を大幅に改善することに成功した。
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