研究概要 |
以下のように、脂質危険因子の急性細胞傷害について調査・研究した。 1.タンパクフリーのリポタンパクモデルとして、表面単分子膜にレシチン(PC)の他、スフィンゴミエリン(SM),コレステロール(Chol)あるいはセラミド(CER)を含有するエマルションを調整した。その粒子径はアポリポタンパクや細胞との相互作用に影響するが、本研究補助金により購入した粒子径アナライザーを用いて調整した。細胞としてはヒト肝癌由来細胞HepG2、マウス単球マクロファージ様細胞J774を用い、アポリポタンパクの添加効果を調査した。 2.高脂肪食後に血中に大量分泌されるカイロミクロンレムナントは急性心臓疾患の危険因子である。表面にCholを含有したカイロミクロンレムナントモデル粒子は、表面水和構造が変化してapoEと強く相互作用する。この粒子はHSPG-LRP経由で細胞に過剰に取り込まれ細胞を死に至らしめることが明らかになった(J.Lipid.Res., J.Biol.Chem.)。 3.エマルション表面膜のSMあるいはCERによるドメイン形成を、蛍光リン脂質を用いた共焦点顕微鏡観察に基づき調査した。CERの含有により表面膜でドメイン形成がおこり、apoEの親和性が亢進した。この結果から、SM含有LDLが動脈表面に分布するSMaseにより分解・変性され、動脈硬化の危険因子となることが推測された(FEBS Letter)。 4.変性LDL表面ではapoBが一部あるいは全部が脂質より遊離し、これが細胞障害の原因の一つになっていると考えられる。本研究で、脂質粒子にインタクトに結合しているapoBはほとんど細胞毒性を示さないが遊離状態では強い細胞障害性を有することを明らかにした。また、ApoA-Iなど両親媒性a-helixもほとんど細胞障害を示さなかった(投稿準備中)。
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