研究概要 |
以下のように、脂質危険因子の急性細胞傷害について調査・研究した。 1.高脂肪食後に血中に大量分泌されるカイロミクロンレムナントは急性心臓疾患の危険因子である。表面にCho1を含有したカイロミクロンレムナントモデル粒子は、表面水和構造が変化してapoEと強く相互作用する。この粒子はHSPG-LRP経由で細胞に過剰に取り込まれ細胞を死に至らしめることが前年度の成果より明らかになった。18年度はさらに、細胞内のCho1の分布、これによるアポートシスの誘導を精査した。その結果、Cho1は細胞内のリソソームに蓄積し、リソソーム膜のストレス、cathepsin-Lの細胞質への漏出、細胞障害の誘導に関わっていることが示唆された(投稿準備中)。 2.レシチンとスフィンゴミエリンを含有する脂質2分子膜は室温付近で2相分離状態にあり、apoA-1により速やかに崩壊、preβ-HDL様微粒子化すること、また、Cho1の添加により、この過程が制御されること、さらにpreβ-HDL様微粒子化は分離している液晶相側で選択的に進行することを明らかにした(J.Lipid Res.48,882-889,2007)。 3.変性LDL表面ではapoBが一部あるいは全部が脂質より遊離し、これが細胞障害の原因の一つになっていると考えられる。本研究で、脂質粒子にインタクトに結合しているapoBはほとんど細胞毒性を示さないが遊離状態では強い細胞障害性を有することを明らかにした。また、ApoA-1など両親媒性α-helixもほとんど細胞障害を示さなかった。さらに、細胞内外のCaイオンの動きを精査し、遊離apoBは細胞膜の透過性を障害していることを明らかにした(投稿準備中)。
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