アルツハイマー病の発症機序に深く関与していると考えられているγセクレターゼによる膜内配列切断機構を理解するため、哺乳類細胞・ショウジョウバエ細胞・バキュロウイルス・Sf9細胞発現系を用いてγセクレターゼの再構成を行い、各構成因子の機能解析を行った。特に活性中心アスパラギン酸を持つPSに対してシステインの反応性を利用したSCAMを用いて生化学的構造解析を試み、PSが脂質二重膜内でポア構造を形成し、その中で加水分解を行っていることを見出した。引き続きPSの全膜貫通領域についてSCAMによる構造解析を進め、C末端領域のTMDすべてについてそのトポロジーおよび機能的アノーテーションを行った。並行してPSの各TMDを異なる膜蛋白のTMDに置換するスワップ型変異体による解析を行い、CTF側のTMDがいずれもγセクレターゼ複合体形成には大きない影響を与えないが、酵素活性には重要であることを見出した。すなわち、PS CTFのTMDがγセクレターゼの酵素活性、特に膜内配列切断の基質輸送から切断において重要な役割を果たしていることを明らかとした。また特にPen-2のN末端領域がγセクレターゼの活性中心ポア構造に影響を与え、γセクレターゼ切断部位を変化させることを見出した。昨年度までに見出した抗ニカストリン抗体の機能について検討し、ニカストリンがγセクレターゼ活性制御における標的分子であることを証明した。またこのニカストリン抗体を利用し一本鎖抗体の作製に着手し、さらに高活性を持つ抗体のスクリーニングを行い、今後ニカストリンを標的とした創薬が可能であることを示唆した。
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