研究課題
基盤研究(B)
1.ERK-MAPキナーゼの核移行・保持の制御に関わる分子として、N末端にSH3ドメイン、C末端に3つのankyrin repeatを有する新規タンパク(p26)を見いだした。又、p26にはp120が特異的に結合する事、p26はERK-MAPキナーゼの下流に位置するキナーゼ(p90^<RSK>)によってリン酸化される事、血清刺激等に応答してp26がリン酸化されるとp120/p26複合体が解離する事より、ERK-MAPキナーゼの細胞内局在がそれ自身によって制御される可能性が示唆された。2.ERK-MAPキナーゼの新規基質分子として、GEF-H1(RhoA特異的GDP/GTP交換因子)を見いだした。GEF-H1はERK-MAPキナーゼによるThr(678)のリン酸化によって活性化され、それはRhoA活性化に連動するが、Rac1に対しては抑制的に機能する事より、ERK-MAPキナーゼがGEF-H1の機能制御、それに引き続くアクチン系の機能変動を介して、細胞運動制御に関与している可能性が示唆された。3.c-Jun N-Terminal Kinase(JNK)がケラチン8のリン酸化を介して、中間径フィラメント構造の調節に関わっている事を明らかにした。すなわち、JNKによるリン酸化によってケラチン8が重合体から単量体へと変化することで、中間径フィラメント構造の弛緩が誘導され、その結果として細胞質分裂が進行できる環境が整備される可能性が示唆された。4.チミジンブロック法を用いてT24細胞をG1期、S期、あるいはG2/M期に同調させた条件下、MEK阻害剤と低濃度の微小管重合阻害剤を併用処理すると、G2/M期で薬剤処理した際に最も顕著な細胞死が誘導され、そこでcyclin B1、Plk1、Aurora-Bの過剰蓄積が認められた。これより、ERK-MAPキナーゼ経路が上記各タンパクの発現誘導を介して、スピンドルチェックポイントの制御に関与している可能性が示された。
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